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2009.1 No.181  発行 2009年1月24日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel:0263-50-6512/Fax:0263-50-6315

 

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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12月のニュースから

足用の回転マッサージ器、誤用で3人窒息死

 家庭用電気マッサージ器を誤った方法で使用したため、ローラーに衣服を巻き込まれて3人が窒息死していたことが16日、厚生労働省と製造元の的場電機製作所(埼玉県川越市)の発表で分かりました。
 同社によると、このマッサージ器は1983〜90年に約42万台出荷した「アルビシェイプアップローラー」で、突起物の付いたローラーに専用布カバーを装着して回転させる、足などをマッサージする製品です。しかし事故にあった3人は布カバーを外した状態で首周辺に使用したため、ローラーに衣服を巻き込まれて首が絞まり窒息死したとみられています。

 厚労省内で記者会見した同社の広沢隆興社長は、「亡くなられた方にお悔やみ申し上げます」と述べつつ、「製品の欠陥ではないので自主回収は考えていない」と説明しました。
  このマッサージ器は医療機器として承認を受けていて、同省は同日付けで業界団体の日本ホームヘルス機器協会に事故を伝達、正しい使用法を呼び掛けるよう注意喚起しました。

 同社によると、事故が起きたのは1986年製造の製品で、3件とも専用の布カバーを装着しないで首へのマッサージ用に使ったため衣服を巻き込んだといいます。説明書には「足裏用」と書かれている上、カバーを外して使わないよう明記していることから、同社では使用者の誤用と決めつけているようです。

 同社によると、99年に栃木県の女性=当時(46)、2003年に香川県の女性=同(67)=が相次いで窒息死していますが、今月2日に北海道紋別市の女性=同(55)の死亡事故が発生するまで、同社は国への報告を行っていませんでした。

 医療機器である今回のマッサージ器には、不具合があったときの国への報告義務がありますが、同社ではこの義務を「知らなかった」というお粗末さで、メーカーとしての責任を果たしていなかったことになります。
また同製品には安全装置がついていませんが、後継機には安全装置が付いているため、いつの段階からか危険を認識していたことになります。このことは取扱説明書や注意ラベルだけで、製品の誤用を防ぎきれなかった事実から、旧製品の利用者に誤用防止の情報提供が適切に行われなかったとみられ、同社の責任問題が問われそうです。


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電気座布団の危険性/国民生活センターが公表

 昨年、国民生活センターに電気座布団が焦げたことから、製品の安全性についての原因究明を行って欲しいとのテスト依頼がありました。
センターでは、電気座布団については様々な使用実態が考えられるため、それらを考慮した劣化の加速試験を実施、ヒータ線がずれることがないかを調べるとともに、万が一ヒータ線がずれたときに異常過熱等で安全性に問題がないか、また低温やけどの危険性から、表面温度についても調べました。
これらのテストから、ヒータ線がずれて一箇所に集中、周りのスポンジやカバーが焦げるまで温度が上昇したといい、電機座布団の危険性が明らかになりました。
一方一部メーカーでは、電気座布団のヒータ線の接着不足等により発火・発煙する可能性を把握して、すでに製品の無償交換の社告を出しているため、センターでは被害拡大防止の観点から12月17日、電気座布団の危険性について公表することにしたものです。
センターの危害情報システムには、2003年度から2008年10月末までに電気座布団の過熱や焦げ等に関する相談が25件寄せられていて、「4、5年前に購入した電気座布団が発煙し、一緒に置いていた座布団もこげた」、「電気座布団から発煙し、足を置く台を焦がした」などの事故があったといいます。
センターでのテストは、インターネットで販売されている約45cm×45cmの大きさのもの7社7銘柄を対象に行いました。実際の使用状況を想定した劣化の加速試験では、ヒータ線のずれはなかったものの、事故原因を分析すると電気座布団が沈み込むような使われ方があり、長い年数の使用では内部のヒータ線がずれることが想定されました。
また、ヒータ線がずれて重なり合った状態で通電させると、安全機構が働く感熱線式では焦げることはありませんでしたが、サーモスタット式ではヒータ線や周囲のスポンジ等が焦げたケースがありました。
また表面温度の最高値ですが、2銘柄ではやけどの危険も考えられる約50℃にも達したものがあり、他銘柄と比較してかなり危険な商品でした。
センターではこれら結果を踏まえて、消費者へ次のアドバイスをしています。
  1. 電気座布団は定期的に点検すること。
  2. 使用時や保管時には電気座布団を畳んだり、きつく曲げたりしない。
  3. 低温やけど防止のため、電気あんか代わりに使わない。
  4. 発火事故を防ぐため、ペットの暖房用として使用しない。

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食用輸入米にカビ毒/農水、汚染米事件後に売却

 農林水産省は19日、タイから輸入し加工食品メーカーに販売したコメから、発がん性が極めて高いカビ毒アフラトキシンが検出されたと発表しました。
 汚染米不正転売事件発覚後に、農水省が販売した輸入米から汚染米が見つかったのは初めてで、メーカーは問題のコメを原料にして製品を作っていましたが、検査結果を待っていたため、幸い流通ルートには乗らなかったとのことです。

 9月に発覚した不正転売事件を受け農水省は、のり原料などの非食用向けでも、汚染米の売却を全面的に停止すると発表していましたが、万全を期すべき食用で汚染米が見つかったことに検査方法の不備が明らかになりました。
 このため同省では、袋のまま売却していたことが検査の不備につながったとして、売却前に袋から出して詰め替えるなどの改善策を早速導入しました。

 問題の米は今年6月、同省がタイから食用としてミニマムアクセス米3508トンを輸入、このうち24トンを10月22日に売却したものです。メーカーが加工の過程でカビの塊180グラムを発見したことから発覚、これを検査した結果、アフラトキシンを0.04ppm検出したものです。
 しかしタイから輸入したコメで作られた、他の製品や在庫を全量検査しましたが、他には検出例はなかったといいます

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タケノコ水煮に偽の生産者写真/一宮の業者、中国産を「国産」と表示

 農林水産省は16日、中国産原料を使っていたにもかかわらず熊本県産などと表示したタケノコなどの水煮を販売した愛知県一宮市の食品製造販売「たけ乃子屋」と、協力した熊本市の「熊本罐詰」など4業者に対してJAS法に基づく是正指示を出しました。
 一部商品の包装パックには生産者と思わせる人物の写真を印刷する工作をするなど、偽装もついにここまで来たか、という感じです。

 同省東海農政局の調べで、たけ乃子屋が昨年7月から今年10月までに製造・販売した水煮のほとんどが中国産のタケノコを使用、併せて商品の産地表示を「熊本県産」や「鹿児島県産」などと国内産に偽装していたが判明しました。
 さらに同社は同様の手口でレンコンの水煮を「愛知県産」、フキを「高知県産」、ゼンマイを「新潟県産」などと、中国産を国内産と表示し、これら偽装販売量は合計は約1000トンにも上るといいます。

  またタケノコの包装パックの裏側には、「熊本県竹林農家の皆さん」と紹介する男性1人と女性2人が並んで写っている写真を印刷、農政局の調べで、3人はいずれも熊本罐詰の社員だったことが分かっています。
たけ乃子屋は中国産タケノコなどを虚偽の産地を印字した包装材とともに、いったん熊本罐詰など4業者に販売、詰め替えをさせたうえで買い戻し、東海地区や首都圏のスーパーで販売していたというもので、周到に計画された偽装工作が見えてきます。

 4業者も偽装を認識していたといいますが、たけ乃子屋に何も言えない業者間の上下関係が、この業界に限らず存在するのが不正の温床となっているようです。
たけ乃子屋は森嘉仁社長名で「品質表示制度に対する認識の甘さを深く反省している。違反の原因を分析し、 再発防止に全社一丸となって取り組む」とする謝罪文を発表しましたが、計画的に偽装工作をしていながら「品質表示制度の認識の甘さ」を反省しているなどの言葉は、あきれるばかりです。明白な原因の分析などは必要無く、真摯に「もうけ主義に走り申し訳ない」となぜ言えないのでしょうか。
 「認識の甘さ」があった、という他人事の発言は、だまされた消費者に詫びる気持ちが全くみられません。むしろ企業の存続が最優先とも言いたげで、厳しい社会的制裁が必要だと思います。

 森嘉仁社長は、包装で熊本罐詰社員の写真を生産農家として使ったことについては「作り手の顔が見える商品の方が消費者にアピールできると考えた。恥ずかしいことだが、自社の営業担当者が熊本で撮影した写真を利用し、事後承諾で(熊本罐詰の)了解を得た」と弁明しましたが、社内には「やめたい」という声もあったものの聞き入れず、利益のためには詐欺もいとわない社長の考えが、同社の破綻につながるようです。

 ところでスーパーなどでも野菜や肉などに生産者の顔写真を表示しているものがありますが、顔写真があれば安全で安心という客観的根拠は何もないのです。これら手法も店側の「騙し」に近いやりかたに思えて仕方ありません。プリントされた写真や文言ではなく、実際の生産現場の検証をベースに、本当に顔の見える関係を持てるシステムを提供してもらいたいものです。

 さて我が国では、「より良く見せたい」との思いから発生した、軽度の“うそ”や“騙し”が多い社会のようで、その代表格である「上げ底商品」は古くから存在します。またばら売りからパック売りになった多くの店では、柑橘類やイチゴなどでへたを見せない鮮度情報を隠す商品が並んでいて、これらは流通業界全体の戦略のようです。

 消費者も「そんなものだ」と考えているようで、傷んだ商品を購入してしまっても、「面倒だから」といって店に意見を言わない人が多くいます。消費者には、そのような不正に“ゆるい”社会を作ってきた側面もある、という認識をもっと持ってもらいたいものです。不正にゆるい日本社会は、食品に関することだけではなくて、社会生活のあらゆるところで感じられることで困りものです。

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農水省、偽装業者名すべて公表へ/食品表示で運用一本化

 農林水産省は17日、食品の表示偽装で改善を指示した事業者名をすべて公表する方針を決めました。これは都道府県の判断で非公表とする事例があったためで、運用を一本化して偽装の防止を強化する方針です。このためJAS法の指針を改正し、来月にも適用することにしました。

 指針改正では、同省や都道府県が改善を指示した場合は必ず事業者名を公表するよう義務付け、事業者名を公表しない「指導」にとどめる場合の基準を明確にした規定も新たに盛り込み、都道府県ごとに判断の違いが出ないようにするものです。

 今まで、表示違反の事業者名を公表するかどうかは、事業者の営業拠点が複数の都道府県に広がっている場合は農水省が、単一にとどまる場合は各都道府県が判断することになっていました。
 しかし農水省が改善を指示した事業者名をすべて公表しているのに対し、各都道府県では業者の不利益を考慮するあまり、公表しないケースが2002年以降18件もあり、対応にばらつきがありました。
 農水省はこれまで、都道府県の判断を尊重して指針改正に慎重でしたが、今年10月にカナダ産馬刺しをめぐる表示違反で、熊本県が県内の食肉卸業者を指導にとどめ、事業者名を非公表にしたことから、「不公平だ」との声が事業者や消費者から寄せられたため、見直しを行うことにしたものです。

 食品の表示偽装という国民を騙す業者が横行、罰則の軽微な点から罪を軽んじる業者が多く、これほど世間に不祥事がありながら対岸の火事としか見ていない彼等に腹立たしさを感じます。
そんなことから今回の農水省の判断は、評価できる動きだと思います。

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二つ星レストランが食材の産地を不当表示/公取委、ヒルトン東京に排除命令

 「ミシュランガイド東京2008」で二つ星評価だったヒルトン東京のフランス料理店「トゥエンティワン」が、メニューで牛肉などの産地を不当表示したとして、公正取引委員会は16日、景品表示法違反(優良誤認)で、ホテル運営会社「日本ヒルトン」(東京)に排除命令を出しました。
 公取委によると、東京・西新宿のホテルにあった同店は、コースや単品料理のメニューに「特選前沢牛フィレステーキのグリエ」などと表示していて、前沢牛という岩手県産のブランド牛に、実際に使った肉は大部分が山形県産だったといいます。

 また「北海道産ボタンエビのマリネ」として提供されていたものはすべてカナダ産冷凍エビを使用していたというから悪質です。
 これらブランド食材を利用した食事の料金は、単品で同ステーキが1万1100円、マリネが3100円という設定でした。また、ホテル玄関のポスターでは「オーガニック(有機)野菜を用いたフレンチ」と宣伝していましたが、使った野菜約100種類のうち有機野菜は大根など4種類のみというひどいものでした。

 同社によると平成19年2月ころから平成20年9月ころまでの間、トゥエンティワンのメニュー及びヒルトン東京の正面玄関の前に設置した掲示板等に掲示したポスターにこれら表示が行われていたといい、ボタンエビについては平成20年7月ころから同年9月ころまでの間行ったものだといいます。

 味の良し悪しで人気になる店もありますが、使っている食材に引かれて「美味しい」と思い込む人も大勢います。今回の事件は、そのような人を狙っての犯罪ともいえるもので、きわめて悪質です。
 ヒルトン東京は今回の事件を重大に受けとめ、問題の発覚からすぐの10月、同店を閉店させ、食材の注文を担当していたフランス人料理長は解雇したとのことです。

 社会的に責任ある同ホテルの対応は適切でしたが、偽のブランド食材を利用したグルメ狙いのレストランが、まだまだあるのだと思います。
 最近増えてきた「本日の料理に使われている食材の産地」を表示したレストランは、好感が持てますが、その表示も信頼できるかどうか心配するようになるのでは困ります。

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