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2009.9 No.190  発行 2009年10月28日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel:0263-50-6512/Fax:0263-50-6315

 

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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9月のニュースから

カプセル玩具誤飲事故で、製造会社に対し製造物責任が認められた事例

 国民生活センターが9月、カプセル玩具(俗にいう「ガシャポン」や「ガチャガチャ」等)誤飲事故で、製造会社に対して製造物責任が認められた事例(鹿児島地裁平成20年5月20日判決)を公表しました。

 本件は、当時2歳10カ月の男児が自宅で遊んでいて、カプセル入り玩具のカプセルが口腔内に入り喉のどを詰まらせて窒息、低酸素脳症による後遺障害が残ったことから、同児およびその両親が被告に対して、同カプセルには設計上および製造上の欠陥があったとして製造物責任法3条に基づき損害賠償を求めたものです。

 判決では、同カプセルは幼児が玩具として使用することが予見され、口腔内に入ると窒息を引き起こす危険を有していたとして設計上の欠陥を認めたものの、両親にも過失があったとし、損害の3割の限度で被告の損害賠償責任を認めました。

 カプセルは、専用ゲーム機でゲームをすると、カプセル入りの玩具がゲーム機内から取り出し口にスムーズに出てくるように、プラスチック製の2つの半球体を組み合わせたもので、直径は約40mm、ほぼゆがみのない球状をしており、空気抜きのための穴が一つ開いているものです。

 原告は、カプセルは2歳10カ月の男児の口腔内に容易に入りやすい大きさであり、表面上滑らかな直径40mmの球状というカプセルの特性および玩具として幼児が手に取って遊ぶという通常予見される使用形態からすると、カプセルには誤飲・窒息を引き起こす危険を有する設計上の欠陥がある。また、その欠陥について表示がないことは、表示上の欠陥にも当たるとして、製造物責任法に基づいて総額約1億8000万円の損害賠償請求訴訟を提起したものです。

 被告は、カプセルは玩具の包装容器であり、カプセルで遊ぶことは予定されていない、カプセルは合理性のあるST基準を満たしているとして、設計上の欠陥について争い、また、カプセル玩具内には、窒息の危険があるので口の中には絶対入れないこと、および3歳未満の子どもの誤飲の危険を表示した説明書兼注意書をカプセル内に入れており、表示上の欠陥もないとし、さらに製造物責任法4条1項の開発危険の抗弁も主張し、原告の主張に対し、全面的に争ったものです。

 判決では、カプセルは直径40mmの球体であること、3歳未満の幼児でも最大開口量が40mmを超えることは珍しくないことからすると、カプセルは、3歳未満の幼児の口腔に入る危険性があり、口腔から取り出しやくするために球体ではなく角形や多角形とし、表面が滑らかでなく、緊急の場合に指や医療器具に掛かりやすい粗い表面とする、また気道確保のため、十分な径を有する通気口を複数開けておく等の設計が必要であった。

 以上から、カプセルは、3歳未満の幼児が玩具として使用することが通常予見される使用形態であるにもかかわらず、3歳未満の幼児の口腔内に入る危険、さらに1度口腔内に入ると除去や気道確保が困難となり、窒息を引き起こす危険を有しており、カプセルは、設計上通常有すべき安全性を欠いていたというべきである。また、ST基準については、それを満たすことのみで、カプセルが幼児の窒息防止のための十分な安全性を有していたとは認められない、としりぞけました。

 また、被告の開発危険の抗弁については、直径39mm以下のものは誤飲、窒息事故を引き起こすおそれがあることは、行政機関が発行する文書や民間団体が発行する乳幼児の救命手当てに関する文書に記載されている。その内容は広く知られた事実であり、カプセルをメーカーが引き渡した時における科学または技術の知見によって、カプセルに設計上の欠陥があったことを認識でき立場にあったとして認めませんでした。

 いわゆるカプセルトイといわれる、玩具が入ったカプセルで遊んでいた幼児が、これを誤飲して窒息し低酸素状態となり、高度の後遺障害を負ったことから、カプセルを製造した玩具メーカーの製造物責任が問われた判例ですが、通常予見される使用形態における事故であり、製造メーカーの過失を認定したものです。

 判決ではまた、カプセルは幼児が玩具として使用することに対する安全設計がなされていないとして、設計上の欠陥として過失認定をしたものです。

 メーカーの言う「カプセルは玩具の包装容器であり、カプセルで遊ぶことは予定されていない」との考えは、ずいぶんと白々しいものです。

 それは消費者の行動パターンを全く知らないか、あるいは知ろうとしない、抗弁のための言葉でしかありません。それは企業の利益が最優先で、自社製品を購入して被害に遭ったユーザーのことなど考えたくない、企業の本根が見えるようです。

 しかし今回のケースでは、家庭内での事故については親に注意義務が大きいとして、メーカーの責任を3割、親の責任を7割の過失相殺をしましたが、この判断はどうなのでしょうか。

 本件のような誤飲による窒息事故は、日常的に起こりえるものですが、幼児の使用が十分考えられる玩具で起きた事故では、メーカー責任は相当大きいはずです。

 しかも誤飲後の重篤な危険を未然に防ぐための方法、形状を変えたり、通気口を複数設けるなどの対策をとり得た立場にあったのに、メーカーは設計変更をすることなく、危険な製品を市場に出したものであり、危険な製品を放置した責任は重大だと思います。

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調理中の突沸事故の防止について/NITEから注意喚起

 NITE(ナイト:独立行政法人製品評価技術基盤機構)は、調理中の突然沸騰(突沸)による事故の防止について注意喚起を行いました。以下、NITEの注意情報を紹介します。

 NITEに通知された製品事故情報のうち調理中に飲み物などが突沸する事故は平成18年4月〜21年8月までに16件ありました。突沸による事故は、電子レンジ、IHこんろ及びガスこんろなどで加熱中あるいは加熱後に発生しています。

 最近7月にもIHこんろで湯を沸かしていたところ、突沸が発生して重傷を負う事故が起こっています。NITEに通知された突沸の事故件数は多くありませんが、家庭において電子レンジ、IHこんろ、ガスこんろなどの使用頻度は極めて高いことから、実際には多くの突沸事故が発生している可能性があります。
 このような突沸を起こす原因は家庭において、あまり知られていないことから、突沸による事故防止のため注意喚起することとしました。

 事故事例として、
事例1:
みそ汁が少し冷めたので弱火で温めていたら、なべがガス台から跳び上がり、みそ汁がこぼれて、やけどをしそうになった。
原因はなべ底面に沈殿したみそのだし成分や麹がガスこんろで再加熱した際に、局部的な沸騰で発生した気泡が沈殿物を一気に押し上げる突沸が発生したものです。

事例2:
電子レンジで加熱したコーヒーを取り出し、飲もうとしたところ、コーヒーが突然に噴き上がり顔にやけどを負った。
原因は「飲み物用」でない「食品用」温めキーでコーヒーを温めたことから、過加熱による突沸が発生したものです。
NITEでは消費者への注意として、IHこんろやガスこんろで、飲み物(コーヒー、茶、酒、水など)を加熱するときは、火力を弱めに加熱してください。

 みそ汁、とろみのある食品(カレーやシチュー等)を加熱するときは火力を弱めにし、よくかき混ぜながら温めてください。強火で急に加熱すると突沸の原因となり、やけどをするおそれがあります。

 また、電子レンジで、飲み物(コーヒー、茶、酒、水など)や、みそ汁、とろみのある食品(カレーやシチューなど)を加熱するときは、設定時間を控えめにしてください
と呼びかけています。

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おしゃれ用カラーコンタクトレンズ、来月から規制

 オシャレで顔のイメージが変わることから、カラーコンタクトレンズの人気が高いようですが、使用者のトラブルが続発、しかもカラーコンタクトレンズはおしゃれ用の“雑貨”扱いのため、取り扱いが雑になったりすることもあります。また色素が溶け出すなど、素材そのものに問題がある製品もあるということから、同製品を薬事法上の商品(医療機器)とする規制が始まります。

 11月4日より始まる規制を前に、厚生労働省は、「カラーコンタクトレンズを使用されている皆様へ」とする次のお知らせを公開しています。

 おしゃれ用のカラーコンタクトレンズ(度なし)が、視力補正用のコンタクトレンズ(度付き)と同様に、薬事法上の「医療機器」として、規制の対象となります。

 これに伴いまして、11月4日以後、カラーコンタクトレンズは、薬事法上の医療機器販売業の許可を取得している販売店でないと、購入できなくなります。

 また、許可を取得している販売店であっても、平成21年2月4日以降は、一定の品質が確認された製品でないと販売できなくなりますので、購入の際はご注意ください、として、消費者には次のような注意を加えています。

 カラーコンタクトレンズは、視力補正用のコンタクトレンズと同様に、誤った使い方をすると、眼障害(健康被害)の原因となる場合がありますので、正しくお使いください。

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ルクエ「アイスキャンディーの型、ざる」でカドミウム検出、回収

 コラムジャパン株式会社は7日、スペインより輸入・販売した、シリコン製家庭用キッチン道具2商品について、自主回収を実施することに決定しました。同社では輸入時の検査により食品衛生法の基準を超えたカドミウムが検出されたため、8月19日より販売を自粛していたものの、その後の自主検査により販売済みの下記回収対象商品からも基準値を超えるカドミウムが検出されたとして、自主回収を決めたものです。

 回収対象商品は、平成20年1月29日から販売を開始した「ルクエアイスキャンディー型2個入り(オレンジ・クリアセット)」と、平成20年7月14日から販売を開始した「ルクエ ストレイン&ストアー(オレンジ)」の2商品です。

 最近のキッチン用品には、おしゃれな色で高温・低温で使用出来るシリコン製の商品が増えてきていますが、今回の回収対象の商品はいずれもオレンジ色となっています。

 カラフルな色の商品が増えていますが、間接的に成分が口に入る商品であることから、使用原材料、製造工程など、安全には十分対処してもらいたいものです。

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