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2010.12 No.204  発行 2010年12月28日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel:0263-50-6315/Fax:0263-50-6512

 

 

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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11月のニュースから

■エレベーターが扉開いたまま降下、1人けが/東大柏キャンパス

 国土交通省は16日、東京大学柏キャンパス(千葉県柏市)の総合研究棟で今月11日、学生18人が乗った「シンドラーエレベータ」製のエレベーターが扉が開いたまま下降を始め、逃げようとした学生1人が軽傷を負ったと発表しました。
  国交省はブレーキの効きが甘かった可能性があるとみて、同社に対し、このエレベーターを含む同機種のエレベーター約360台について、ブレーキの点検をするよう指示しました。

  国交省や東京大によると、事故のあったエレベーターは19人乗りで、平成16年から使用していたものです。事故当日、学生らが1階から乗車し5階に上がろうとしたところ、エレベーターは扉が閉まり始めるのと同時にゆっくりと下降したため、脱出しようとした2人のうち1人が床の段差で膝を打撲したものです。
  このとき重量制限ブザーは作動しなかったといい、エレベーターはその後、地下1階まで下降し、自動的に1階に上昇、非常ボタンを押すと扉が開いたといいます。

  12日に情報提供があり、同省や柏市などが立ち入り調査したところ、ブレーキワイヤーの納まりが悪かったためブレーキが正常に作動しなかった可能性があることが判明しましたが、今年7月の定期点検では異常は見つからなかったといいます。

  シンドラー社製のエレベーターをめぐっては、18年6月に東京都港区所有のマンションで住民の男子高校生=当時(16)=がエレベーターに挟まれ死亡する事故が発生しましたが、今回のエレベーターは港区のものとは別の機種だといいます。

  ただこの事故当時、国土交通省は、全国の同社製エレベーター6273基の緊急点検結果を発表しています。それによると同社製エレベータは、過去1年に閉じ込め175件を含む1294件の不具合があり、1基あたりの1ヶ月の不具合の発生率は1.7%であった(大手5社の不具合発生率は1.2%)とし、国土交通省は、同社製エレベータに構造上の問題はないが、保守管理が充分でないとしていました。

  その後もいつくか事故が発生していて、2007年9月12日には、大阪府堺市の娯楽施設「とこりん」石津店で、シンドラーエレベータ社が保守するエレベータ(旧日本エレベーター工業製、1970年製造)が4階に上がる途中で2階まで降下し、エレベーター内に一時的に閉じ込められる事故が発生、2007年10月22日には大阪府の西成警察署で、署内に2基あるエレベータのうち1基が、無人のまま最上階の7階まで上昇し、天井に衝突して停止、20日に点検した際には異常はなかったといいます。
  このように同社の保守点検作業上、何か決定的な問題が隠れているような気がします。

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ハイアールの洗濯機で火災、約33万台をリコール

 ハイアールジャパンセールスは、同社が輸入・販売した洗濯機について、発煙する火災事故が6件発生したことから、対象製品について無償で点検・部品交換をすると発表しました。なおいずれの事故も人的被害はないとのことです。

  対象となるのは、ハイアールジャパンセールスが2002年から2006年に輸入・販売した、小容量の洗濯機18機種で、2007年に解散した三洋ハイアール社の製品も含まれます。対象台数は合計329,406台ということです。

  経産省が公表した事故内容によると、発煙する火災事故6件のうち3件がコンデンサーの製造工程において異物が混入したため、内部短絡が生じて絶縁劣化が徐々に進行、その結果コンデンサーが過熱し、発煙に至ったとしています。コンデンサーには、異常があった場合に運転を停止する保安装置が付いていなかったといいます。

  また別の1件については原因を調査中だとしていますが、コンデンサーに膨張が認められているといいます。残りの2件については、電気配線の焼損が著しく原因は不明なものの、製品に起因して事故が発生したと考えられるといいます。

  ハイアールでは事故の再発防止を図るため、同様の事故が発生する恐れのある18機種について、11月12日より無償点検を実施、対象商品のユーザーに対し、問い合わせ窓口に連絡するよう呼びかけています。対象となる型番、製造番号は、ハイアールのホームページで公開されています。

  電子部品のうちコンデンサーはいつか短絡する恐れのある部品で、製品設計時に短絡試験を行い、問題があるときはヒューズや電源供給を遮断する保護装置をつけるものです。同社ではこのような安全対策を行っていなかったことになり、問題があります。

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インラインスケートの点検とメンテナンス/テクニカグループジャパン

 米国消費者製品安全委員会(CPSC)は、Rollerblade USA社が輸入したインラインスケートの一部製品について、車輪のボルトが緩み使用者が転倒、負傷する危険性があるとして、2010/11/09に自己点検を呼びかけるニュースリリースを発表しました。
  これを受けて(株)テクニカグループジャパンは、同一製品のローラーブレードの点検とメンテナンス手順をまとめ、同社Webサイトに公開しました。

  点検する必要性について、「滑走を繰り返しているうちに、スケートの各パーツは負荷によって、摩耗や損傷、緩みなどが発生するため、その状態のまま使用すると、思わぬケガや事故につながる恐れがある」として、滑走の前後には必ず点検とメンテナンスを行うことを促しています。

  点検の手順についても次のように説明しています。

1.シューレースに摩耗や損傷が無いかどうかを確認
2.カフ部の損傷、ならびにカフを固定しているビスに緩みなどが発生していないかを確認
3.バックルやストラップを点検し、異常や損傷等が無いかを確認
4.フレームを固定しているビスに緩みがないかを確認。緩みが発生している場合は、スケートに付属している専用レンチでしっかりと締め直す
5.フレームにゆがみ等が無いか、ウィールがまっすぐに配置されているかどうかを確認
6.ウィールを固定しているシャフトに緩みが無いか確認。緩みが発生している場合は、専用レンチでしっかりと締め直す
7.ウィールの摩耗具合をチェックする。摩耗が進行していたり、片減り等をおこしていたら、交換する
8.ブレーキの摩耗具合をチェックする。ブレーキには使用可能な範囲を示すインジケーターが記されている(「WEAR LIMIT」の文字とラインで表示)。この印まで摩耗が進んでいたら、交換を行う

  なお、交換用のパーツ等については、スケートの購入販売店に問い合せること、またスケートに付属している「品質保証書」にも、上記以外の使用ならびに保管上の注意点が記載されているため、あわせて確認するよう促しています。

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小径タイヤの折りたたみ自転車について/国民生活センター

 小径タイヤ(8インチ)の折りたたみ自転車「A-RideX」について、国民生活センターが当該自転車についてフレームの強度に問題があるとして、段差のある道路などでは使用しないよう注意喚起情報を提供したことは、ASPニュース2010年10月号で紹介しました。
  しかし、市場に出回っている事故品と同様の構造を持つ他製品についてもフレームの強度不足等の問題が懸念されるとして、同センターでは3社5銘柄について再度テストを実施、結果を公表しました。

  同センターによると、いずれの銘柄も走行速度や段差走行について注意・警告を行っていたが、具体的な走行速度や段差を走行した場合に破損する恐れがあることを表示していたのは1銘柄だけで、どの程度の段差を想定しているのかを表示していた銘柄はなかったといいます。

  走行速度については、いずれの銘柄も18km/h以上で走行でき、普通に走った場合でも10km/h以上だったが、歩くくらいのスピードでは安定して走行できなかったとしています。

  15km/hで4cmの段差を上る試験では、1銘柄は前方チューブに変形が生じただけでしたが、他の4銘柄は前方チューブの破損や前ホークの破断が発生しました。

  いずれの銘柄も段差を上ろうとする際に激しく前方に転倒し、特に前方チューブが変形しただけの銘柄は、ダミー人形が車体ごと跳ね上がり、頭部から路面に落下してしまいました。

  さらに、テスト対象の中には、異なる銘柄名の取扱説明書が添付されたものや、タイヤの空気が抜けてしまうもの、走行中にチェーンが切断したもの、ブレーキワイヤの端部が脱落しブレーキが利かないもの、ハンドルが曲がって付いたもの、反射板が前後逆のものがあったといい、あまりにもひどい状況のようです。

  同センターは、小径タイヤ(6〜8インチ)の折りたたみ自転車について、事業者に対しある程度の段差でも安全に走行できるようタイヤの径や強度の改善を求めるとともに、消費者に対しては、段差や凹凸での走行を避け、異常を感じた場合には直ちに使用を中止するよう呼びかけています。

  ただ自転車は、自分の子どもや第三者が使うことも多く、屋外使用時に普通に存在する段差で簡単に壊れるような「おもちゃ」的なものでは、商品の購入を控えたほうがいいようです。

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