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2011.7 No.211  発行 2011年7月26日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel:0263-50-6315/Fax:0263-50-6512

 

 

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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6月のニュースから

■JR北海道に事業改善命令/乗客の避難誘導マニュアル不適切

 北海道占冠村のJR石勝線トンネル内で発生した特急列車の脱線火災事故で、大畠章宏国土交通相は18日、乗客の避難誘導が不適切だったとして、JR北海道に対し鉄道事業法に基づく事業改善命令を出しました。
 鉄道事業者に同命令が出されるのは6例目で、最も重い大臣名での事業改善命令は、平成15年に中央線と京浜東北線の高架切替・軌道工事ミスで輸送障害を起こしたJR東日本に続き2例目だといいます。このことから今回の事故で明らかになった同社のずさんな安全管理に、国交省の厳しい姿勢を感じます。

 国交省によると、事故後の特別保安監査で、運転士や車掌、指令員の避難誘導などの対応マニュアルが部署ごとに複数あり、つじつまが合わずに非常時に混乱が起きるなど不適切な点があることが判明、マニュアルを統一し、整合性のあるものに見直すなどの改善措置を講じて9月17日までに報告するよう求めました。

 同省によると、JR北海道の火災発生時や異臭・異音発生時の避難誘導マニュアルは、対応の仕方が事例ごとに細分化されるなど多数つくられていたため、現場の運転士や車掌は、事態が発生するたびに札幌市にある指令センターの指示を仰ぐのが常態化していたといいます。
 今回の事故でも、列車停止直後に車両から煙が出ているのを確認した車掌が、乗客を避難させようと指令センターに報告しましたが、指令はマニュアルに沿って、いったんドアを開けるのを待つよう指示したため、乗客への避難誘導が遅れたといいます。

 一方、列車は脱線してから停止するまで約900メートル走行しましたが、JR北海道の一部現場では、運転士に伝えれば車掌が非常ブレーキをかけなくてもいいと教育していたとのことです。
 国交省は「車掌がブレーキをかけていれば400〜500メートルで停止できた」と指摘、曖昧な安全教育が事態を悪化させたと断じています。また脱線の原因とみられる車両下部に取り付けられた部品の脱落についても、エンジンの動力を車輪に伝える推進軸の探傷検査や、周辺部品を固定するナットの締め付け確認が一部で実施されていなかったことを指摘、整備方法を改善するよう行政指導し、改めて事業改善命令を出す可能性を示唆しました。

 加えて国交省は、脱線火災事故後に運転士、車掌の乗務中の居眠りや信号機の不具合といった運行の安全にかかわる不祥事・トラブルが相次いだJR北海道の体質も問題視、これらは行政処分である事業改善命令の対象にはならなかったものの、車両の整備方法などとともに、車内の安全管理体制を見直すよう改善指示を出しました。

 今回は幸いにも死者が出ませんでしたが、ものが焼けた臭いのする煙が充満しているのに「火が見えないから火災ではない」、と乗務員が指令に報告をしたことは信じ難いことでした。同社のマニュアルでは、炎の存在で火災の確証を得なければならない、としていますが、多くの乗客の安全を確保するためには、インシデント・アクシデント発生時には、最悪の重大事故をも想定して「早め早めの対策」を取らなければなりません。 緊急時における同社のマニュアルは、事務的な報告の域を出ておらず、乗客の安全優先という根本的なポリシーが抜け落ちていたようです。

 今回のケースは他の企業にも参考になることが多々ありそうで、「対岸の火事」ではなく「他山の石」として安全対策について考えて欲しいものです。

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バイブレーションスピーカーで発熱・発煙/キングジム

 株式会社キングジムは、同社が2011年5月27日から販売したバイブレーションスピーカー「PREON(プレオン)」VS1において、発熱・発煙する等の事象が報告されたとして、対象製品を購入した方に対し使用を中止するよう呼びかけています。
 同社では対象製品の販売を中止し、後ほど回収方法をホームページにて発表するとしています。

 バイブレーションスピーカーは、振動板のないスピーカーのドライブユニットで、音源につないでテーブルなどに置くと、テーブルが振動板として駆動されて音が出るもので、置かれるものによってはなかなか良い音が出るようです。家庭でちょっとした音楽を聴いたり、パソコンなどのプレゼンなどに利用する用途として発売されましたが、発売1か月ほどで販売中止になるとは、単純な設計ミスがあったのでしょう。

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USB扇風機回収/シグマ

シグマA.P.O システム販売株式会社は、USB扇風機「UMF01Rシリーズ」、「UMF02シリーズ」の一部製品において、スイッチ部品の不具合により、本体上部のスイッチ付近が発熱する不具合が生じる恐れがあるため、製品を回収すると発表しました。

 当該製品の出荷時期はUMF01Rシリーズが2011年4月〜2011年6月3日で、UMF02シリーズは2011年5月〜2011年6月3日とのことです。
 対象シリアル番号はUMF01RシリーズではD11、E11、UMF02シリーズではE11となっています。

 節電のためにエアコン設定温度を上げている関係から、職場でも個人的にUSB扇風機を利用する人が増えているようです。該当する製品を持っている人は、早めの回収に応じたいものです。

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■ウベックススポーツジャパン、スキー用ヘルメットを無償交換

 ウベックススポーツジャパンが平成20年9月より輸入販売した「Uvexスキーヘルメットfunride」の一部製品に製造上の欠陥があることが判明したとして、当該製品の回収を始めました。

 同社によると、ヘルメットの頭頂部分(通風口・シャッター部分およびその合成部分)のショック吸収が不足し破損する懸念があり、最悪の場合、転倒などの強い衝撃が加わった際に重大な怪我に繋がる恐れがあるとしています。

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■インスタント麺の粉末スープから可塑剤/香港政府が検出

 香港政府は27日夜、日本から輸入されたインスタント麺から規定値を超える可塑剤が検出されたと発表しました。「頻繁に食べても人体に悪影響を与える量ではない」としながらも、消費者に食用を避けるよう呼びかけています。販売者はすでに店頭から該当商品を撤去し、販売分の回収を始めているようです。

 可塑剤が検出されたのは、イオンのプライベートブランド(PB)商品の「トップバリュ塩ラーメン」で、包装に同封された粉末スープから食物環境衛生署食物安全センター(CFS)の基準値1.5ppmを上回る2ppmのDEHP(フタル酸ジエチルへキシル)含有が確認されたといいます。DEHPは発がん性が疑われる物質で、先月末に台湾製のペットボトル入り飲料や食品に広く含まれていることが判明、問題となっていたものです。

 CFSが店頭商品から集めたサンプルを検査して判明、すぐに販売をやめるよう指導し、すでに店頭からは撤去されています。販売したイオンストアーズ(香港)では28日までに専用ホットラインを設けて問い合わせに対応し、購入者には返金に応じています。

 ただCFSは「基準を超える量が検出されたものの、頻繁に食べても世界保健機関(WHO)の定める摂取上限値に達することはない」として、冷静な対応を呼び掛けています。

 イオン本社は原因を調査中で、香港政府の検査で含有が確認されたのは塩味の粉末スープだけで、インスタント麺そのものや同ブランドの他フレーバーの粉末スープも問題なかったとしています。
同社によると、該当商品は日本国内で製造・包装されたもので、日本全国のほかタイなどに出荷された可能性があるとしています。同社では今回の問題を受け、原因が特定されるまで日本でも販売を見合わせることにし、日本の公的機関に成分検査を依頼しました。
  同社が香港の検査機関(CMA社)において自主検査を実施したところ、検出された数値は基準値を下回る0.35ppmでしたが、念のため日本で販売している製品も販売を一時中止したものです。

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消費者庁、塩の通販業者に措置命令

 食用塩の商品ラベルなどで事実と異なる表示をしていたとして消費者庁は6月14日、お茶やハーブ、関連食品などの輸入・販売を手がける日本緑茶センターに対し景品表示法違反(優良誤認)で、措置命令を行いました。

 今回問題となったのは日本緑茶センターが「セルリアンシーズ・シーソルト(顆粒)」の名称で通販サイトや実店舗などで販売していた食用塩で、消費者庁によると同社は2002年8月頃から09年10月頃までの間、同商品を「純粋さを追求するため海水を自然蒸発させて製造されます。自然塩ならではのまろやかな旨味をお楽しみください」と表示、09年11月頃からも「最初から最後まで塩田で天日の力を使い、結晶させた完全天日塩です」と天日塩と認識される表示をしていたそうです。

 本来「天日塩」とは、海水を太陽熱と風力によって自然乾燥させて結晶化させる方法により製造された塩であり、凝固防止剤も使用されていないものです。しかし、消費者庁が行った調査で、同商品は天日蒸発による海塩を溶解して洗浄した後、釜で乾燥させたものであることが判明、凝固防止剤も添加されていたといいます。

 そのため同庁は、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示すものと判断、景品表示法違反で同社に措置命令を下したものです。

 同商品はアメリカの食塩メーカーから輸入しているもので、商品本体に添付したラベルや通販サイトなどの表示内容は同社が決定していたといいます。

 日本緑茶センターは、「輸入元からは現在も天日塩として発売している『粗塩』と同じ正規の製法だと説明を受けていたが、実際は違っていた。しっかり確認すべきだった」(同社)と説明していますが、検証という自社の責任を放棄していたようです。

 同社では現在までに4000本以上を自主回収、今後再発防止に向けて確認担当者を配置し、マニュアルを徹底させる方針だといいます。

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